家づくりの舞台裏・・・「老津の家」のこぼれ話

 

 

中村好文さんの著書「普通の住宅、普通の別荘」に、以下の場面があります。

 

 


  (明月谷の家のクライアントさんは)すまいに対する理想が非常に

  高いときています。素材にしても、設備機器にしても、使い勝手

  にしてもまるで妥協することをしません。

  「予算のこともあるんだから、この辺にしておいたら・・・」と

  諭しても、なかなか言うことを聞きません。

 

  もしかしたらこの年若い夫婦は「妥協」という便利な大人の言葉

  を知らないのではないかと思ったほどでした。

 



この一節を読んで真っ先に思い浮かべたのは、「老津の家」 のクライアントさまのお顔でした...(ゴメンナサイ) 

“妥協という便利な大人の言葉を知らない愛すべきクライアントさま”が
「どこの建築会社に行っても、相手にしてくれない・・・」と、私たちの事務所へ相談に来てくださったのは、2010年の秋のこと。

 

 

建築相談に来ていただいた折にまとめた要望と問題点(2010年10月)
建築相談に来ていただいた折にまとめた要望と問題点(2010年10月)

 

 

法律的に、構造的に、制度的に、性能的に(特に断熱)、システム的に、解決しなければならない課題はたくさんありましたが、「なんとかなりそうです」と返事をします。

技術的・法律的にはなんとか解決できそうでしたが、なにより厳しいと感じたのは予算のこと。「最低の仕様なら・・・」ということで、設計に取り掛かります。

 

予算的に厳しいことはクライアントも認識しているのですが、実際に設計がはじまると、どうしても良い物へ、良い物へ、と要望が膨らんでいってしまいます。

時に「これはまずい!!」と感じたときには、設計を中断し、工務店さんに見積りをお願いして現実に立ち返っていただくということが、度々ありました。

 

 

見積り調整の打合せ風景。クライアント、工務店、建築家の3者が揃って金額の交渉を行います。
見積り調整の打合せ風景。クライアント、工務店、建築家の3者が揃って金額の交渉を行います。


そんな事の繰り返し。一歩進んで二歩下がるといった打合せを重ね、こだわりにこだわり抜いた家づくり。

この家に対する想いが強かった分、このクライアントらしいとても楽しい家に仕上がったと思います。

 

工事の経過はこちらのブログで綴っていますのでよろしければご覧ください。 http://dikta.exblog.jp/i23/